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    「御病人はどちらで?」

    と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、

    「さうです、さうです。さつきも少し遠乗りをやりましてね。帰つて来たばかりなんです。どうしてもこの辺は馬ででもないと、用達しが不便でしてね。町へもこれで出かけます」

    練吉はもうさつきから殆ど一人でぐいぐいやつているにもかゝはらず、むしろ青い顔だつた。

    房一は面喰つて、ぽかんと口を開けた。

    やつと、徳次は感心した。青島陥落はついこなひだのことで、その時は徳次も提灯ちやうちん行列に出たのである。

    「いや、わしは出んぞ」と叫んだ。

    「あゝ、さうだつた。なあんだ!」

    「いかんと云ふわけもあるまいさ」

    房一はどこか鹿爪らしい恭順な面持で、控目にじつくり身体を押へるやうにして上るとうしろ向きになつた猫背の老医師の肩がひよいひよいとまるで爪さきで歩いているやうに彼を奥の方へ導いて行つた。

    「あなたは、多分――」

    と、相沢は口ごもつた。

    と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、濁だみ声で云つた。

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