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    道平は納得したやうにうなづいたが、又ゆつくり身体を坐りなほすのと一緒に、

    それはまるで、よほど深く知り合つた間柄の、何年か見ずにいた者同士だけがやるやうな並外れて馴れ馴れしい様子だつた。

    「もう河原町へは当分帰る気はないんですかね。貴方にお貸したところをみると」

    「本当も本当でないもありやしませんよ。財産譲渡無効、その返還を請求したのだよ」

    と、云ひながら徳次の肩をつかんで押しもどした。誰もが疲労のための一種煤すゝけじみた鎮静を現していたにもかゝはらず、練吉だけは明かにまだ興奮していた。と云つて悪ければ、恐しく深い印象を与へられたものの如くであつた。そして、一応の取調べを受けに、二人の責任者が参考人として自動車に乗せられ、本署のある町まで同行を求められたときに、練吉は自分も乗う込まうとして加藤巡査にひきとめられた。

    「どうして又今まで黙つていたのかね」

    と、誰かが大声で叫んだ。

    「ふん」

    今頃になつて、男はさう訊き、盛子がそれに答へる前に、ひとりでうなづいていた。

    「坊は?」

    「――へえ、まだお帰りぢやないのかね」

    「かりに、おれが真正面から反抗的に出て、それがために住みにくくなつたとしても、同じことだ」

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