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小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。
「それから、あれだが、今までよう訊かなんだが、――あれは、どうしたもんかの、大石さんの方は?」
「袴はそこですよ。足袋を先きにはくのよ」
房一は前の方を向いたまゝだつた。
正文は黙つて聞いていたが、このときふいに今まで前屈みに折りたゝんでいた背をぐつと伸したやうに思はれた。そして、あの噛みつくやうな眼がぎろりと房一を一瞥した。
小谷は房一に話しかけた。
遠くの方で誰かが呼んでいた。
「入りましたよ。それがねえ、穴の中は苔が生えたやうな、水たまりもあつてね、やつとこさ奥まで行つてみたんだが、まはりの土はぼろぼろ落ちるし、何のことはない洞穴でさあね、――それでも連中はあつちこつち突ついてみてたがね、含有量はまあもつと試掘してみなけりや判らんさうですよ」
「居なくたつて訴訟はいくらでもできらあね」
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
「往診?ふむ、ふむ」
「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」
「ふむ、ふむ。――どなたでしたかね。お名前は?――ふむ、ふむ。――住所は?いや、字あざはどこでしたかな――ふむ、ふむ」